情報確認:2026年10月13日
「このまま今の病院で働き続けていいのだろうか」。当直続きで疲労がたまっているときや、医局から異動の話を聞いたとき、ふとそう考える医師は少なくありません。
退職を考えること自体は、悪いことではありません。大切なのは、「何がつらいのか」と「次に何を変えたいのか」を分けて整理することです。
この記事では、医師が退職を考えるよくあるきっかけを7つ紹介し、辞める前に確認しておきたいこと、次の働き方の選択肢をまとめました。
医師が退職を考える7つのきっかけ
1. 当直・オンコールが続き、体力の限界を感じたとき
もっとも多いきっかけの一つが、長時間労働と当直・オンコールの負担です。連続勤務のあとに通常診療が続くと、疲労が抜けないまま次の勤務に入ることになります。
2024年4月から、医師にも時間外・休日労働の上限規制が適用されました。原則は年960時間(A水準)で、救急医療を担う病院や研修医などには年1,860時間の特例水準(B・連携B・C水準)があります。特例のうちB・連携B水準は、2035年度末を目標に終了する予定です。
ただし、制度が変わっても、職場によって実態はさまざまです。「宿日直許可があるから当直は労働時間に数えられていない」「自己研鑽の扱いがあいまい」といったケースもあります。今の勤務先がどの水準なのか、当直がどう扱われているのかを一度確認してみましょう。
2. 医局人事で、希望しない異動や派遣を告げられたとき
大学医局に所属していると、数年ごとの異動や関連病院への派遣があります。家族の生活や子どもの学校、自分のやりたい診療と合わない異動を告げられたとき、退局や転職を考え始める医師は多いです。
医局を離れると、人事の不確実さから解放される一方、ポストや症例を自分で探す必要が出てきます。メリットとデメリットの両方を書き出しておくと判断しやすくなります。
3. 給与や評価に納得できないとき
同じ診療科・同じ年次でも、勤務先によって年収は大きく変わります。特に大学病院では、外勤(アルバイト)で収入を補っている医師も少なくありません。
「仕事量に対して給与が見合っていない」と感じたら、基本給、当直手当、外勤の可否、退職金の有無を並べて、今の待遇を客観的に見てみましょう。
4. 人間関係や病院の方針とずれを感じたとき
上司や他職種との関係、経営方針の変化、診療方針の違いも退職のきっかけになります。とくに「患者さんのために必要だと思う医療ができない」というずれは、日々のストレスにつながりやすいものです。
人間関係の問題は、チームや担当の変更で解決することもあります。辞める前に、院内で相談できる人や制度がないか確認しておきましょう。
5. 出産・育児・介護など、家庭の事情が変わったとき
出産や子育て、親の介護、パートナーの転勤など、家庭の状況が変わると、これまでの働き方を続けるのが難しくなります。当直なし、時短勤務、週4日勤務などを希望して、勤務先を変える医師もいます。
今の職場で短時間勤務や当直免除が認められるかを先に確認し、難しい場合は、条件に合う職場を探す選択肢があります。
6. 専門医を取ったあと、キャリアの方向を考え直したとき
専門医の取得や研修の区切りは、働き方を見直すタイミングになりやすい時期です。「このまま大学に残るか」「市中病院で臨床を続けるか」など、選択肢が一気に広がります。
目先の不満だけで決めず、5年後・10年後にどんな医師でいたいかを考えてから動くと、転職後の後悔を減らせます。
7. 開業・在宅医療・産業医など、別の働き方に関心が出たとき
病院勤務以外の働き方に興味を持ったことが、退職のきっかけになることもあります。クリニックでの外来中心の勤務、在宅医療、産業医、健診、将来の開業準備などです。
いきなり常勤で移るのが不安なら、定期非常勤やスポット勤務で経験してから判断する方法もあります。
「辞めたい」が一時的か見極める3つの質問
疲れているときほど、判断は極端になりがちです。退職を決める前に、次の3つを自分に問いかけてみてください。
- その不満は、3か月以上続いているか?繁忙期や一時的な人手不足が原因なら、時期が過ぎれば軽くなることもあります。
- 今の職場で変えられることか?当直回数、担当業務、勤務日数などは、上司や医局に相談すれば調整できる場合があります。
- 次の職場で何を変えたいか、言葉にできるか?「当直を月2回以下にしたい」「通勤を30分以内にしたい」など、具体的に言えるほど職場選びの失敗が減ります。
なお、眠れない、食欲がない、気分の落ち込みが続くといった状態がある場合は、退職の判断より先に、心身のケアを優先してください。産業医や信頼できる医師への相談も選択肢です。
退職を決める前に確認しておきたいこと
退職を伝える時期と手順
医師の退職は、後任の確保や担当患者の引き継ぎが必要になるため、早めに伝えるのが基本です。勤務先の就業規則で「何か月前までに申し出るか」を確認しましょう。医局に所属している場合は、病院だけでなく医局への相談も必要です。異動は年度替わりの4月に合わせることが多いため、医局人事が決まる前に意思を伝えておくとスムーズです。
お金と保険の準備
退職すると、健康保険や年金、住民税の支払い方が変わります。退職金の支給条件(勤続年数)や、次の職場の給与が入るまでの生活費も確認しておきましょう。くわしくは次の記事でまとめています。
次の働き方の選択肢
医師の働き方は、常勤の病院勤務だけではありません。今の不満の原因に合わせて選びましょう。
| 働き方 | 特徴 | 向いている人 |
|---|---|---|
| 常勤で別の病院へ転職 | 収入と身分が安定しやすい。当直の有無や回数は施設で大きく異なる | 臨床を続けながら、勤務条件や人間関係を変えたい人 |
| クリニック勤務 | 外来中心で、当直がない求人も多い | 当直・オンコールの負担を減らしたい人 |
| 定期非常勤(週1〜数日) | 勤務日数を調整しやすい。複数の勤務先を組み合わせられる | 育児・介護と両立したい人、開業準備中の人 |
| スポット勤務 | 単発で働ける。検診や当直代行など | 収入を補いたい人、別の分野を試したい人 |
| 産業医・健診医 | 勤務時間が規則的で、夜間の呼び出しが少ない | 生活リズムを整えたい人 |
| 在宅医療 | 訪問診療が中心。オンコール体制は施設ごとに違う | 患者さんの生活に寄り添う医療をしたい人 |
一人で悩まず、医師専門の転職サービスで情報を集める
退職するかどうか決めきれない段階でも、医師向けの転職サービスで「どんな求人があるか」「今の条件は相場と比べてどうか」を聞いてみると、判断材料が増えます。登録しても、すぐに転職しなければいけないわけではありません。最初の相談で「情報収集の段階です」と伝えておきましょう。
医師向けのサービスには、常勤転職に強いもの、非常勤・アルバイトを中心に扱うものがあります。サービスごとの特色と向いている人は、次のページで比較しています。
▶ 医師向けの転職サービスを比較する(医療・介護の転職サービス比較)
相談するときは、次の4点を先に伝えるとスムーズです。
- 希望する勤務地と、通勤できる範囲
- 常勤・定期非常勤・スポットのどれを探しているか
- 当直・オンコールの希望(なし、月◯回まで、など)
- 転職したい時期(例:来年4月)
よくある質問
医局を辞めると、もう大学には戻れませんか?
医局や診療科によって考え方が違うため、一概には言えません。円満に退局し、関係を保っておくことで、後から非常勤勤務や共同研究などでつながる医師もいます。退局の伝え方と時期には配慮しましょう。
転職回数が多いと不利になりますか?
回数そのものより、「なぜ移ったのか」「次の職場で何をしたいのか」を説明できるかが大切です。面接では、前の職場の不満より、これからやりたい診療や働き方を中心に話しましょう。
次の職場が決まる前に辞めてもいいですか?
心身の不調が強い場合は、休むことを優先してください。そうでなければ、収入が途切れないよう、次の勤務先を決めてから退職するほうが安心です。生活費の目安は転職先が決まる前に辞めても大丈夫?生活費は何か月分必要かで整理しています。
まとめ:退職は「逃げ」ではなく、働き方を選び直すこと
医師が退職を考えるきっかけは、長時間労働、医局人事、給与、人間関係、家庭の事情、キャリアの節目などさまざまです。どれも、真剣に働いてきたからこそ生まれる悩みです。
まずは「何がつらいのか」と「次に何を変えたいのか」を書き出してみてください。そのうえで、今の職場で変えられることと、職場を変えないと解決しないことを分けて考えましょう。医師としての経験を活かす場所は、一つではありません。
関連記事:医療・介護の転職サービス比較/40代・50代の転職の考え方/退職・転職の記事一覧
医師の時間外労働の上限規制については、厚生労働省および各都道府県の医療勤務環境改善支援センターの公開資料をもとに整理しています(2026年10月13日確認)。個別の勤務条件や退職手続きは、勤務先の就業規則と担当者にご確認ください。

コメント
コメント一覧 (1件)
[…] こうしたサインがあるときは、今の職場の何が自分の価値観と合っていないのかを書き出してみましょう。当直回数や担当業務のように、相談すれば変えられることもあります。退職を考えるきっかけについては、医師が退職を考えるのはどんなとき?でもまとめています。 […]