「転職先が決まってから辞める方が安全」と分かっていても、職場環境や働き方によっては先に退職したいこともあります。転職先が決まる前に辞めること自体が間違いなのではありません。大切なのは、退職後に何か月生活できるかを数字で把握してから決めることです。
退職後は給与が止まる一方で、家賃や住宅ローン、食費、借入返済は続きます。さらに、給与天引きだった健康保険・年金・住民税が自分で払う支出として見えるようになります。
まず「毎月の最低生活費」を出す
最初に、仕事がなくても必ず発生する支出だけを足します。家賃・住宅ローン、食費、水道光熱費、通信費、保険料、車、教育費、借入返済などです。旅行や外食、趣味など一時的に減らせる支出は別にしておきます。
| 支出 | 確認するもの |
|---|---|
| 住居 | 家賃・住宅ローン・管理費 |
| 生活 | 食費・水道光熱費・通信費 |
| 移動 | 車ローン・駐車場・ガソリン・交通費 |
| 家族 | 教育費・扶養家族の生活費 |
| 借入 | カードローン・リボ・消費者金融など |
| 退職後 | 健康保険・年金・住民税 |
この合計が、転職活動中に毎月最低限必要になる金額です。たとえば最低生活費が月25万円なら、貯金150万円で単純計算6か月分です。ただし、引っ越しや医療費、家電の故障など突発的な支出もあるため、全額を使い切る前提にはしない方が安全です。
生活費は3〜6か月分が一つの目安。ただし全員同じではない
転職先が決まっていない状態で辞めるなら、最低生活費の3〜6か月分を用意できると安心度は上がります。ただし、これは絶対的な基準ではありません。
単身で家賃が低く、借入もなく、すぐ応募できる職種なら必要な余裕は小さくできます。一方、住宅ローンや教育費、借入返済があり、希望職種が限定される人は、6か月以上の余裕を見た方が現実的です。
「貯金÷生活費」だけでは足りない。退職後に増える支出を入れる
在職中は健康保険、厚生年金、住民税などが給与から自動的に引かれています。退職すると、健康保険は任意継続・国保・扶養のいずれかへ切り替え、次の会社まで期間が空けば国民年金への切り替えも必要です。
住民税も前年所得をもとに続きます。退職時期によっては最後の給与から残額が一括徴収されることもあります。「今の手取り生活費」だけを基準にすると、退職後の必要額を少なく見積もってしまいます。
失業給付はすぐには入らない
自己都合退職では、雇用保険の基本手当を受けるまでに7日間の待期があり、2025年4月1日以降の退職では原則1か月の給付制限があります。さらに離職票の受取、ハローワークでの手続き、失業認定、振込まで時間がかかります。
そのため、失業給付は「最初の生活費」ではなく、退職後の資金を補うものとして考える方が安全です。詳しくは失業給付の記事で整理しています。
借金返済がある人は必要資金を多めに見る
カードローン、消費者金融、リボ払い、自動車ローンなどの返済は、退職しても止まりません。最低生活費が月20万円でも、毎月5万円の返済があるなら、実際に必要なのは月25万円です。
貯金を返済に使い続けると、想像以上の速さで資金が減ります。退職後に返済が厳しくなることが予想できるなら、延滞してからではなく、退職前に借入残高と返済額を一覧にしておきましょう。債務整理の基本はこちらで説明しています。
在職中に転職活動するメリット
お金の面だけでいえば、在職中に転職活動を始める方が有利です。毎月の給与があるため、求人を比較する時間を持ちやすく、「早く決めないと貯金がなくなる」という焦りを減らせます。
また、転職先との給与交渉でも、無職期間が長くなることへの焦りが少ない分、条件を冷静に比較しやすくなります。可能であれば、求人を見る、職務経歴書を作る、転職エージェントと面談するところまでは退職前に進めておきましょう。
先に退職するメリットもある
一方、先に退職すると、面接日程を組みやすくなり、資格取得や職業訓練にまとまった時間を使えるというメリットがあります。長時間労働などで転職活動そのものができない人にとっては、先に辞めることが突破口になる場合もあります。
重要なのは、「先に辞めるか、転職先を決めてから辞めるか」を一般論で決めるのではなく、資金の余裕と現在の職場に残る負担を比較することです。
こんな場合は先に退職を慎重に考える
- 貯金がほとんどなく、翌月の生活費にも不安がある
- 毎月の借入返済が大きい
- 住宅ローン・教育費など削りにくい固定費が大きい
- 希望職種が狭く、転職活動が長期化しやすい
- 退職後の健康保険・住民税などをまだ計算していない
逆に、先に退職する選択肢を検討しやすいケース
- 十分な生活防衛資金がある
- 家族の収入など別の生活基盤がある
- 資格取得や訓練に集中する明確な計画がある
- 現在の勤務を続けながらでは転職活動が現実的に難しい
- 職場環境が心身の安全に関わり、継続する負担が大きい
退職前に作る「3行資金表」
①現在の預貯金、②毎月の最低生活費、③退職後に追加で必要になる税・社会保険料。まずこの3つを出してください。
さらに「失業給付が入る前までに何か月分必要か」「借入返済を含めると何か月持つか」を計算すると、退職時期をかなり現実的に判断できます。
まとめ|辞める・辞めないではなく「何か月持つか」で考える
転職先が決まる前に退職すること自体が直ちに失敗ではありません。しかし、お金の見通しがないまま辞めると、貯金が減るほど転職活動を急がざるを得なくなり、本来選ばなかった会社へ決めてしまうことがあります。
退職前に、最低生活費、健康保険、年金、住民税、失業給付、借入返済を一枚にまとめる。それから「今辞めるか」「もう数か月準備するか」を決める方が、次の仕事を選ぶ自由を残せます。
退職前のお金全体については、「会社を辞めたいけどお金が不安|退職前に確認すべき7つのこと」もあわせて確認してください。
参考にした公的情報
厚生労働省の雇用保険案内、日本年金機構の退職・転職時の国民年金案内、協会けんぽの退職後の健康保険案内、東京都主税局の住民税案内をもとに整理しています。

コメント
コメント一覧 (2件)
[…] 退職を決める前に、失業給付だけでなく、退職後に必要な生活費や健康保険、住民税までまとめて確認しておくと、転職活動を焦らず進めやすくなります。 […]
[…] まだ転職先が決まっておらず、退職を先に考えている場合は、「転職先が決まる前に辞めても大丈夫?生活費は何か月分必要か」もあわせて確認してください。 […]