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生魚・生肉を食べるイヌイット、極寒を生き抜く知恵

イヌイットは、カナダ北部一帯、アメリカ合衆国アラスカ州、グリーンランドなど、極北の氷雪地帯で暮らしています。この地域では、植物がほとんど育たず、農耕ができません。そんな彼らの食生活、極寒を生き抜く知恵にはどのようなものがあるのでしょうか。

目次

イヌイットの食事

イヌイットは、極北の氷雪地帯で暮らしています。この地域では、植物がほとんど育たず、農耕ができません。そのため、イヌイットは動物資源を狩猟や捕獲することで生活をしています。

イヌイットの食事には、海獣や陸獣、魚や鳥などが含まれます。特に海獣は重要な食料源であり、ワモンアザラシやアゴヒゲアザラシ、セイウチやシロイルカ、ホッキョクグマなどが捕らえられます。これらの動物は肉だけでなく、脂肪や内臓も食べられます。

イヌイットは生肉や生魚を食べることが知られていますが、これはあまりにも寒い地域なので野菜が育たないためで、ビタミン不足になるところを生魚や生肉でビタミンを補っているのです。

こうしたイヌイットの食事はかなりの高脂肪食ですが、欧米人に比べて心筋梗塞などになる人が少ないのです。これに関する記事は別のサイトにありますので興味がある方はご覧ください。

イヌイットは高脂肪食なのに心筋梗塞が少ない理由はこちら>>グルメ&リラクゼーションライフ

これは保存方法や調理法に関係しています。冬には氷点下30度~40度になることもありますが、夏には氷が溶けて温度が上昇します。このような気温変化に対応するために、イヌイットは余剰の肉や脂肪を石で積んだ貯蔵穴に保存したり、発酵させたりします。

イヌイットの極寒への適応

住居

イヌイットは極寒地帯で暮らすために、さまざまな知恵を使い工夫をしてきました。その一つが住居です。イヌイットは季節ごとに移動生活を送っていたため、常に移動できる家を用意する必要がありました。そのような環境下で作られた住居が「イグルー」と「カルマク」です。

「イグルー」は冬用の住居であり、「雪の家」と呼ばれることもあります。氷と雪を使って作るドーム状の家で、日本でいう「かまくら」に近いです。イグルーは雪の断熱効果によって内部の温度を保ちます。また、ドーム型の構造は風圧に強く、雪が積もっても崩れにくいです。

「カルマク」は夏用の住居であり、「テント」と呼ばれることもあります。クジラの骨や木くずなどによるテント状の構造物をアザラシの皮やトナカイで覆った家です。カルマクは軽量で簡単に組み立てられるため、移動に便利です。また、アザラシの皮やトナカイは防水性や防風性が高く、夏の雨や風から身を守ります。

衣服

   

もう一つの知恵が衣服です。イヌイットは寒さから身を守るために、アザラシやカリブー(トナカイ)の毛皮や皮革を使った衣服を着ています。特にアザラシの皮は水分を含まないため、湿気や凍結に強く、保温性が高いです。イヌイットはアザラシの皮を二枚重ねて着たり、大きめのサイズを着ることで、暖かい空気層を作っています。顔と袖口以外は隙間がないのも保温性を保つ工夫です。

このように防寒の工夫がされた衣服は、世界で最も優れた防寒着といわれています。

イヌイットの遺伝子

また、イヌイットは遺伝的な適応もしてきました。2016年に発表された研究では、イヌイットが「特定の体脂肪から熱を生産させる遺伝子」を旧人類から受け継いでいたことが判明しています。この遺伝子は体温調節に役立つと考えられており、寒さに耐える能力を高めています。

近年のイヌイットの食生活

近年のイヌイットの食生活は欧米型の食事となりました。欧米型の食事とは、牛や豚などの肉類、加工肉、乳製品、砂糖がたっぷりはいった清涼飲料水、マヨネーズ、アルコール類、などを多く摂取する食事パターンです。生魚、アザラシなどの生肉が中心だった昔とはだいぶ違います。そのせいで、イヌイットは肥満になる人が増え、生活習慣病にかかる人も多くなりました。

まとめ

イヌイットは生まれながらにして、極寒地帯という厳しい環境が待ち受けています。それを突破する方法は代々受け継がれてきた食事、衣服、住居といった伝統を忠実に守ることでした。野菜を育てられずビタミン不足になるのであれば生魚・生肉を食べてビタミンを補う。寒さで凍えないようにアザラシなどの毛皮で防寒する。冬と夏では住居の形式を変える。

イヌイットは自然と共生する生活様式を続けてきましたが、近年では外部社会への依存が強まり、砂糖,牛肉などの動物性脂肪が多い欧米型の食生活となり、健康状態に変化が起こっています。

イヌイットの伝統的な食文化や知恵は貴重なものですから、良い伝統は今後も継続しつつ、新しい文化も上手に取り入れていくことを願っています。

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