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新しい職場、新しい人間関係。再出発のタイミングで、ふと鏡を見て髪が気になった経験はありませんか。
以前の記事「身だしなみを整えることの大切さ」で書いたように、見た目を整えることは自分を信じ直すための土台にもなります。薄毛もそのひとつです。ただ、薄毛対策は商品や情報があふれていて、何を信じればいいのか分かりにくい分野でもあります。
この記事では、日本皮膚科学会の「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン(2017年版)」をもとに、根拠のある対策とそうでない対策を整理し、自分に合った始め方を考えていきます。主に男性の薄毛(AGA)を対象にしています。
薄毛の原因はひとつではない
成人男性の薄毛で最も多いのは、男性ホルモンと遺伝が関わる男性型脱毛症(AGA)です。生え際の後退や頭頂部が薄くなるのが典型的なパターンで、ゆっくり進行します。
一方で、次のような脱毛はAGAとは原因が異なります。
- 円形脱毛症:コイン状にまとまって抜ける
- 休止期脱毛:強いストレス、急なダイエット、病気のあとなどに全体的に抜ける
- 病気や薬が関係する脱毛:甲状腺の病気などが原因になることがある
急に大量に抜ける、まだらに抜ける、頭皮に赤みやかゆみがあるといった場合は、育毛剤を試す前に皮膚科を受診してください。市販の発毛剤の添付文書でも、これらのケースは使用しないよう定められています。
ガイドラインで見る薄毛対策の「推奨度」
ガイドラインでは、治療法ごとに科学的根拠を検討し、推奨度をA〜Dで示しています。男性型脱毛症に関する主な評価は次のとおりです。
| 推奨度 | 意味 | 主な対策 |
|---|---|---|
| A | 行うよう強く勧める | フィナステリド内服、デュタステリド内服、ミノキシジル外用(男性は5%) |
| B | 行うよう勧める | 自毛植毛術、LED・低出力レーザー照射、アデノシン外用 |
| C1 | 行ってもよい | カルプロニウム塩化物外用、t-フラバノン外用、サイトプリン・ペンタデカン外用、ケトコナゾール外用、かつらの着用 |
| C2 | 行わないほうがよい | 成長因子導入・細胞移植療法 など |
| D | 行うべきではない | 人工毛植毛術、ミノキシジル内服 |
ポイントは、強く勧められているのは「内服薬(フィナステリド・デュタステリド)」と「ミノキシジルの塗り薬」だということです。
逆に言えば、「育毛シャンプー」や「髪にいいサプリ」は、それだけで薄毛を改善できるという根拠は示されていません。シャンプーは頭皮を清潔に保つためのもの、と割り切って考えるのが現実的です。
また、ミノキシジルの飲み薬は国内では薄毛治療薬として承認されておらず、ガイドラインでも「行うべきではない」とされています。「飲むだけで生える」といった宣伝を見かけたら、慎重に判断してください。
対策の選び方:3つのルート
根拠のある対策を始める方法は、大きく分けて3つあります。
1. 市販の発毛剤(ミノキシジル外用薬)から始める
ミノキシジル5%の塗り薬は、第1類医薬品として薬局やドラッグストア、通販で購入できます。購入時には薬剤師による説明があります。
- 向いている人:まずは自分で手軽に始めたい人
- 使えない人:20歳未満の人、女性(女性用は別製品)、AGA以外の脱毛症の人、頭皮に傷や炎症がある人
- 相談が必要な人:高血圧・低血圧の人、心臓や腎臓に病気がある人、65歳以上の人など
- 効果の目安:少なくとも4か月は毎日使用。6か月使っても改善がなければ中止して医師・薬剤師に相談
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2. オンライン診療で処方を受ける
フィナステリドやデュタステリドの飲み薬は医師の処方が必要です。最近はスマートフォンで診察を受け、薬を自宅に届けてもらえるオンライン診療が増えています。
- 向いている人:通院の時間がとれない人、クリニックに入るところを人に見られたくない人
- 選ぶときのポイント:診察する医師の情報が明示されているか、薬の名前と料金が分かりやすく書かれているか、未承認の飲み薬を前面に押し出していないか
3. 対面のクリニックでしっかり相談する
進行が気になる人や、頭皮の状態を直接見てもらいたい人は、対面のクリニックが安心です。治療の選択肢も広がります。
- 向いている人:薄毛がある程度進んでいる人、治療方針をじっくり相談したい人
- 選ぶときのポイント:初回のカウンセリングが無料か、総額の目安を事前に示してくれるか、高額なコースの即日契約を迫られないか
番外編:発毛サロンという選択肢
クリニックとは別に、頭皮ケアを中心とした「発毛サロン」もあります。ただし、発毛サロンは医療機関ではありません。医師の診察や、フィナステリド・ミノキシジルなどの薬の処方は受けられない点を理解したうえで検討してください。
- 受けられること:頭皮の洗浄やマッサージ、マイクロスコープでの頭皮チェック、生活習慣のアドバイスなど
- 向いている人:頭皮の状態を定期的に見てもらいたい人、ケアの習慣づくりを人に伴走してほしい人
- 注意点:ガイドラインで強く勧められている治療(内服薬・ミノキシジル外用)の代わりにはなりません。また、長期コースや物販を組み合わせると総額が高くなることがあるため、契約前に総額・期間・解約条件を必ず確認しましょう
関西エリア(大阪・神戸・奈良・滋賀)では、発毛・育毛専門サロンのBIDAN(ビダン)があります。カウンセリングで、料金の総額と、クリニックでの治療と併用する場合の進め方も確認してみてください。
植毛という選択肢
自分の後頭部などの毛を薄くなった部分に移す自毛植毛は、ガイドラインで推奨度Bとされています。薬で改善しにくいほど進んだ場合の選択肢になります。
一方で、費用が高額になりやすいこと、手術であることから、複数のクリニックで説明を聞いて比較するのがおすすめです。なお、合成繊維を植える人工毛植毛は、ガイドラインで「行うべきではない」とされています。
髪以外の「第一印象」も一緒に整える
薄毛対策は効果が出るまでに数か月かかります。その間にできることもあります。
- 髪型を変える:短めに整えるだけで、薄さが目立ちにくくなることがあります。思い切って剃るのも一つの手です(下で紹介する研究を参照)
- 眉とひげ:顔の印象を大きく左右するパーツです
- 肌と歯:清潔感の印象に直結します
- 服のサイズ:体に合った服を着るだけで、ぐっと若々しく見えます
髪だけに集中せず、全体の清潔感を底上げすることが、第一印象を変える近道です。
「隠す」より「剃る」が好印象になるという研究も
米ペンシルベニア大学ウォートン校のアルバート・マネス氏が2012年に発表した研究では、同じ男性の写真を、髪がある状態と、画像加工でスキンヘッドにした状態で比べたところ、スキンヘッドの方が「支配的」「男らしい」「自信がある」と評価されました(魅力の評価は下がりました)。また、文章で人物を描写した実験では、「自然に薄くなっている」男性の評価が最も低かったと報告されています。中途半端に隠すより、短く刈る・剃るといった「はっきりした髪型」を選ぶことも、第一印象を整える選択肢になりそうです。
転職の面接で薄毛が気になる人へ
薄毛の印象には、若さや魅力の評価が下がる一方で、成熟・知性・誠実さの評価が上がるという「二面性」があるとする研究があります。営業や接客など若々しさが求められやすい職種では影響が出やすい可能性がある一方、経験や信頼が重視される職種ではプラスに働く面もあるかもしれません。研究の詳細や、面接までの期間に合わせた対策は「薄毛は面接で不利?研究でわかった第一印象の「二面性」と、職種別の考え方」でまとめています。
よくある質問
Q. 薬をやめると元に戻りますか?
ガイドラインでは、フィナステリドは内服をやめると効果が失われるとされています。薄毛治療は「続けること」が前提になるため、無理なく続けられる費用で始めることが大切です。
Q. どれくらいで効果が分かりますか?
フィナステリドは少なくとも6か月程度続けて効果を確認すべきとされています。市販のミノキシジル外用薬も、効果が分かるまでに少なくとも4か月の使用が必要とされています。数週間で判断しないことがポイントです。
Q. 使い始めに抜け毛が増えた気がします
ミノキシジルの外用では、使い始めに一時的に抜け毛が増えることがあると報告されています。ただし、急激な脱毛やまだらな脱毛が見られた場合は使用を中止し、医師や薬剤師に相談してください。
Q. 副作用はありますか?
フィナステリドやデュタステリドでは、性欲の低下などの性機能に関する副作用や、まれに肝機能障害が報告されています。また、前立腺がんの検査で使われるPSAという数値が下がるため、検診を受けるときは服用していることを必ず伝えてください。これらの薬は女性、特に妊娠中・妊娠の可能性がある人は使用できません。
ミノキシジル外用薬では、頭皮のかゆみやかぶれのほか、頭痛、めまい、動悸、むくみなどが報告されています。気になる症状が出たら使用を中止し、添付文書を持って医師や薬剤師に相談してください。
まとめ:完璧より、清潔感の底上げから
- 急に抜ける・まだらに抜ける場合は、まず皮膚科へ
- 根拠のある対策は「フィナステリド・デュタステリドの内服」と「ミノキシジルの外用」
- 始め方は、市販薬・オンライン診療・対面クリニックの3ルートから選べる
- 効果判定には最低でも4〜6か月。続けられる方法を選ぶ
- 髪と並行して、髪型・眉・肌・服装で第一印象を整える
見た目を整えることは、自分を大切に扱い直すことでもあります。再出発の準備として、できることからひとつずつ始めてみてください。
転職や働き方の見直しを考えている方は、退職・転職突破の記事もあわせてどうぞ。
【参考】
・日本皮膚科学会「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」
・PMDA 一般用医薬品 添付文書「メディカルミノキシジル5%」
・Mannes AE. “Shorn Scalps and Perceptions of Male Dominance.” Social Psychological and Personality Science, 2012.(紹介記事:Live Science)
・Muscarella F, Cunningham MR. “The evolutionary significance and social perception of male pattern baldness and facial hair.” Ethology and Sociobiology, 1996.
・Butler J, et al. “Impression formation as a function of male baldness.” Perceptual and Motor Skills, 1998.
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。治療については医師・薬剤師にご相談ください。