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証券口座の乗っ取りやネットバンキングの不正送金は、2025年に一気に広がり、2026年になっても毎月被害が出ています。困難を突破するには、まず「突破のための資金」を守ることが欠かせません。資産を失うこと自体が、新しい、大きな困難になってしまうからです。
- 証券口座・ネットバンキングの不正アクセスが今どれくらい起きているかがわかる
- IDやパスワード、ワンタイムパスワードが盗まれる手口がわかる
- 今日からできる対策(パスキー・多要素認証・通知設定など)がわかる
- 被害にあった・偽サイトに入力してしまったときの対処法と、補償の考え方がわかる
まず今日やること(5分でできる5つ)
- パスキーまたは多要素認証をオンにする:ログイン・出金・出金先の変更の3つに設定する
- ログイン・取引・出金の通知をメールやアプリで受け取る
- 証券会社・銀行の公式サイトをブックマークし、そこからだけログインする
- メール・SMSのリンクからはログインしない
- ほかのサービスと同じパスワードを使っていたら、すぐに変える
証券口座・銀行口座への不正アクセスは今も続いている
金融庁のまとめでは、証券会社を装った偽サイト(フィッシングサイト)などでログイン情報を盗まれ、勝手に株を売買される被害が2025年3月ごろから急増しました。2025年の1年間で、不正取引は9,851件、不正に売られた株と買われた株の金額は合わせて約7,400億円にのぼります。
9,851件証券口座の
不正取引(2025年)
約7,400億円不正な売却+買付の
金額(2025年)
約104億円ネットバンキングの
不正送金被害(2025年)
※証券口座は金融庁「インターネット取引サービスへの不正アクセス・不正取引による被害」の集計(売却約3,948億円+買付約3,468億円)。ネットバンキングは警察庁「令和7年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」。
証券各社がログイン時の多要素認証を必須にするなど対策を進めた結果、件数は2025年のピークより大きく減りました。それでも、2026年に入ってからも被害はゼロになっていません。
| 時期 | 不正アクセス | 不正取引 | 売却金額 |
|---|---|---|---|
| 2025年4月(ピーク) | 5,484件 | 3,027件 | 約1,625億円 |
| 2025年12月 | 382件 | 116件 | 約23億円 |
| 2026年3月 | 158件 | 121件 | 約159億円 |
| 2026年6月 | 160件 | 102件 | 約7億円 |
| 2026年8月 | 39件 | 25件 | ― |
※金融庁の公表資料(2026年7月・9月公表分)より。件数が減っても、1件あたりの金額が大きい月もあり、油断はできません。
銀行も同じです。警察庁によると、2025年のネットバンキングの不正送金被害は約103億9,700万円で、前年の約1.2倍。とくに法人口座の被害は約47億円と、前年の約4倍に増えました。銀行員を名乗る電話で偽サイトに誘導する「ボイスフィッシング」が目立っています。
証券口座・ネットバンキングが乗っ取られる手口
「高度なハッキング」より、「本人に入力させる」手口がほとんどです。
手口1:本物そっくりのメール・SMSから偽サイトへ誘導(フィッシング)
「お取引の確認が必要です」「セキュリティ強化のため再ログインしてください」などのメールやSMSで、証券会社や銀行のサイトにそっくりの偽サイトへ誘導します。そこで入力したID・パスワードがそのまま盗まれます。
→ メール・SMSのリンクからは絶対にログインしない。公式アプリかブックマークから開く
手口2:ワンタイムパスワードもその場で盗む
偽サイトにID・パスワードを入れると、次に「ワンタイムパスワード(認証コード)」の入力を求められます。犯人は入力された情報をその場で本物のサイトに打ち込むため、SMSやメールで届く認証コードだけでは防ぎきれないことがあります。
→ 偽サイトでは使えない「パスキー」などの認証に切り替える
手口3:銀行員を名乗る電話(ボイスフィッシング)
「不正利用防止のための手続きです」と電話をかけ、メールで送った偽サイトでの操作を指示します。会社の口座が狙われ、1社で数億円の被害が出た例もあります。
→ 電話でネットバンキングの操作を指示されたら、いったん切って公式の番号にかけ直す
手口4:使い回しのパスワード、ウイルス感染
ほかのサービスから漏れたパスワードを試されたり、パソコンやスマホに入り込んだウイルスに入力内容を盗まれたりします。
→ 金融機関ごとに別のパスワードにし、パソコン・スマホのセキュリティ対策もしておく
証券口座の乗っ取りでは、口座にある株を勝手に売り、そのお金で犯人が用意した国内外の小さな会社の株を大量に買わせるケースが目立ちました。株価をつり上げて、犯人が持っている株を高値で売り抜けるためとみられています。口座からお金が引き出されていなくても、持ち株が知らない銘柄に入れ替わっていれば被害です。
証券口座の不正アクセス対策|今すぐ設定したいこと
日本証券業協会はガイドラインを改正し、ログイン・出金・出金先口座の変更といった大事な操作では、「フィッシングに強い多要素認証」(パスキーなど)を証券会社に求める方向を示しました。設定は会社側が用意していても、オンにするのは利用者です。
1. パスキーを登録する
スマホの顔認証や指紋認証でログインする方法です。偽サイトでは使えない仕組みなので、フィッシングに強いのが特長です。対応している証券会社なら最優先で設定しましょう。
2. 多要素認証を「すべての場面」でオンに
ログインだけでなく、取引・出金・出金先口座の変更にも認証をかけられる会社があります。設定画面で、選べるものは全部オンにしておきます。
3. 通知を受け取る
ログイン、注文、約定、出金、登録情報の変更の通知をメールやアプリで受け取ると、身に覚えのない操作にすぐ気づけます。
4. 使わない機能は止める
しばらく取引しない口座は、ログインや取引を一時的に止められる機能(会社によって名前は違います)を使う、または口座の整理を考えます。
あわせて、口座の中身を月に1回は見る習慣をつけましょう。知らない銘柄がある、現金残高がおかしい、登録メールアドレスや出金先が変わっている、といった異変は、早く気づくほど被害を小さくできます。
ネットバンキングの不正送金対策
| 対策 | 理由 |
|---|---|
| 振込の上限額を必要な分まで下げる | 万一乗っ取られても、一度に送られる金額を小さくできる |
| ワンタイムパスワードは専用アプリかトークンを使う | SMSやメールで届くコードより盗まれにくい |
| トークンに出た振込先・金額が自分の操作と同じか確かめる | 犯人の振込に、気づかず承認してしまうのを防ぐ |
| 振込・ログインの通知をオンにする | 知らない送金にすぐ気づき、銀行に止めてもらえる |
| 電話で操作を指示されたら切る | 銀行が電話でネットバンキングの操作をさせることはない |
覚えておきたい大原則:銀行や証券会社が、メール・SMS・電話でパスワードやワンタイムパスワード、暗証番号を聞くことはありません。聞かれたら、その時点で詐欺です。
被害にあった・偽サイトに入力してしまったときの対処法
「入力してしまったかも」と思った時点で動きます。早いほど被害を止められ、補償も受けやすくなります。
1. 金融機関に電話して止める
公式サイトに載っている不正利用・紛失の窓口に電話し、ログインや取引・送金を止めてもらいます。多くの金融機関が24時間受け付けています。
2. パスワードを変える
その口座のパスワードと、同じパスワードを使っているほかのサービスをすべて変えます。メールアカウントのパスワードも忘れずに。
3. 履歴を確認し、記録を残す
取引・出金・送金の履歴、届いたメールやSMS、偽サイトのURLを、スクリーンショットなどで残しておきます。
4. 警察に相談する
お住まいの都道府県警察のサイバー犯罪相談窓口、または最寄りの警察署に相談します。被害届の受理番号を補償の手続きで聞かれることがあります。
5. 補償の申し出をする
金融機関の案内にしたがって申し出ます。パソコンやスマホはウイルスチェックをしておきます。
補償はされる?銀行と証券会社の違い
| 銀行(個人のネットバンキング) | 証券会社 | |
|---|---|---|
| 基本の考え方 | 全国銀行協会の申し合わせにもとづき、各銀行が補償の規定を定めている | 大手・ネット証券10社が、2025年1月以降の不正取引に一定の補償をすると申し合わせ |
| 補償の決め方 | 本人に過失や重大な過失があれば、減額や対象外になることがある | 被害の状況、ID・パスワードの管理状況、会社の注意喚起の内容などから個別に判断 |
| 注意点 | 銀行への連絡が遅れると、補償の対象になる期間が短くなることがある(例:連絡日の30日前以降の払戻しが対象) | ID・パスワードの管理など、利用者側の対策も判断材料になる |
金融庁のまとめでは、個人のネットバンキングの被害は1件あたり平均174万円、補償率は約8割(不正な払戻しでないとわかったものを除くと82.2%)です。逆にいえば、全額が戻るとは限りません。パスワードをメモして人に見られる場所に置いていた、偽サイトだと注意されていたのに入力した、といった事情は不利に働きます。
証券口座の補償は、10社の申し合わせ(SMBC日興証券、SBI証券、大和証券、野村證券、松井証券、マネックス証券、みずほ証券、三菱UFJ eスマート証券、三菱UFJモルガン・スタンレー証券、楽天証券)にもとづき各社が個別に対応しています。「補償があるから大丈夫」ではなく、「補償の判断で不利にならないよう、できる対策をしておく」と考えるのが現実的です。
※補償の条件は金融機関ごとに異なります。必ずご自身が利用している銀行・証券会社の規定を確認してください。
パソコン・スマホの守りも固める|詐欺サイトを警告してくれるソフト
偽サイトは年々見分けにくくなっています。市販のセキュリティソフトの多くは、ウイルス対策に加えて、フィッシングサイトや詐欺サイトを開こうとしたときに警告してくれる機能を持っています。人の目だけに頼らず、二重の守りにしておくと安心です。ソフトの選び方は「セキュリティソフトは必要?Windows Defenderだけで大丈夫か」でくわしく比べています。
迷ったらこれ。機能の多さで選ぶ
ノートン 360
危険なサイトの警告、パスワード管理、VPNなどがプランに応じてついてきます。パソコンとスマホをまとめて守れます。
動作の軽さで選ぶ
ESET HOME セキュリティ
パソコンが重くなりにくいのが特長です。ネットバンキングを使うときにブラウザを保護する機能もあります。
日本語サポートで選ぶ
ウイルスバスター クラウド
国内メーカーのトレンドマイクロが提供。詐欺サイトや偽のショッピングサイトの警告に対応し、日本語サポートも手厚い定番ソフトです。
費用をおさえて選ぶ
ZERO ウイルスセキュリティ
更新料がかからない買い切り型。毎年の費用をかけずに、パソコンの基本的な守りを固めたい人に向いています。
よくある質問
パスキーとは何ですか?
パスワードの代わりに、スマホやパソコンの顔認証・指紋認証・PINでログインする仕組みです。登録した本物のサイトでしか使えないため、偽サイトに誘導されても情報を盗まれにくいのが最大の特長です。証券会社や銀行が対応していれば、設定しておくことをおすすめします。
SMSで届く認証コードだけでは不十分ですか?
何もしないよりはずっと安全です。ただし、偽サイトで認証コードまで入力させ、その場で使う手口があります。選べるならパスキーや専用アプリ、トークンによる認証のほうが安全です。
届いたメールが本物かどうか見分けられません。
見分けようとしないのがいちばんの対策です。本物に見えても、メールやSMSのリンクは開かず、公式アプリかブックマークからログインして、お知らせ欄で同じ内容が出ているか確かめましょう。
被害が怖いので、証券口座を解約したほうがいいですか?
対策をすれば、解約まではしなくても大丈夫な場合がほとんどです。ただ、使っていない口座はログインを止めるか、整理しておくと狙われる入り口が減ります。
高齢の親の口座が心配です。
「金融機関がパスワードを聞くことはない」「電話で操作を指示されたら切って家族に連絡する」の2つだけでも、繰り返し伝えておきましょう。振込上限額を下げておく、通知を家族も見られるメールアドレスにする、といった設定も役立ちます。
まとめ:資産を守ることも「突破」の準備
証券口座の乗っ取りもネットバンキングの不正送金も、入り口のほとんどは「偽サイトに入力させる」ことです。パスキーや多要素認証をオンにする、通知を受け取る、メールのリンクからログインしない。この3つだけでも、狙われにくさは大きく変わります。万一のときは、すぐに金融機関へ連絡して止めることが、被害と補償の両方を左右します。
困難を突破するための資金は、守ってこそ使えます。今日のうちに、ふだん使っている銀行と証券会社の設定画面を開いてみてください。
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