先に結論
- 「1万歩」は、1965年に日本で発売された歩数計「万歩計」の名前が由来とされ、研究から決まった数字ではない
- 大規模な研究では、死亡リスクの低下は7,000〜8,000歩前後で頭打ちになる。60歳以上ならもっと少なくてもいい
- 2,000歩しか歩かない人が4,000〜5,000歩に増やすだけでも効果がある
- 1万歩はおよそ6〜7km・100分前後・200kcal前後。歩くだけで大きく痩せるのは難しい
「1日1万歩」はどこから来た?
1万歩という目標の由来は、はっきりとはわかっていません。アメリカの医学誌に載った研究の中で、研究者は1965年に日本で発売された歩数計「万歩計」の名前から広まった可能性が高いと書いています。 つまり「1万歩」は、きりのいい数字として商品名に使われたもので、病気や寿命との関係を調べて決まった数字ではありません。それが世界中に広まり、いつの間にか「健康の基準」のように扱われるようになったのです。1日1万歩の効果は本当?研究でわかったこと
7,000歩で死亡リスクは約半分に(2025年の分析)
2025年に、歩数と健康の関係を調べた研究57本をまとめた分析が発表されました。1日2,000歩の人と比べると、7,000歩の人は死亡リスクが47%低く、これは1万歩とほとんど同じでした。認知症のリスクも38%低くなっていました。 研究チームは、7,000歩を超えると、ほとんどの健康指標で上乗せの効果は小さくなると説明しています。一方、2型糖尿病のリスクは1万歩以上でさらに下がっていたので、「1万歩が無意味」というわけではありません。60歳以上は6,000〜8,000歩、60歳未満は8,000〜10,000歩で頭打ち
2022年には、世界15の研究(約4万7,000人)をまとめた分析も発表されています。それによると、死亡リスクの低下は- 60歳以上:1日6,000〜8,000歩で頭打ち
- 60歳未満:1日8,000〜10,000歩で頭打ち
高齢女性では4,400歩から効果、7,500歩で頭打ち
アメリカで平均72歳の女性約1万7,000人を調べた研究では、1日約2,700歩の人と比べて、約4,400歩の人で死亡リスクがはっきり低くなり、7,500歩あたりで頭打ちになりました。厚生労働省の目安は「成人8,000歩、高齢者6,000歩」
日本の厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」でも、目安は成人で1日約8,000歩以上、高齢者で約6,000歩以上とされています。こちらも1万歩ではありません。くわしくは「ウォーキングの効果と1日の目安」でまとめています。| 研究・指針 | 効果が頭打ちになる歩数の目安 |
|---|---|
| 2025年 57研究の分析 | 約7,000歩(死亡・認知症など) |
| 2022年 15研究の分析 | 60歳以上 6,000〜8,000歩/60歳未満 8,000〜10,000歩 |
| 2019年 高齢女性の研究 | 約7,500歩 |
| 厚生労働省ガイド2023 | 成人 約8,000歩以上/高齢者 約6,000歩以上 |
1万歩は何キロ?何分?消費カロリーは?
何キロ:およそ6〜7km
歩幅は身長×0.45がひとつの目安とされます。身長160cmなら歩幅は約72cmで1万歩は約7.2km、身長170cmなら約76cmで約7.6kmです。ふだんの街歩きでは歩幅が小さくなりやすいので、実際には6〜7km前後と考えておくとよいでしょう。何分:100分前後
ふつうの速さで歩くと、1分間に100歩前後です。1万歩なら約100分(1時間40分前後)。もちろん、これは通勤や買い物、家の中の動きも含めた1日の合計で考えます。まとめて100分歩く必要はありません。消費カロリー:体重60kgで約200kcal
ふつうの歩行は3.0メッツ(安静時の3倍のエネルギーを使う運動)とされています。安静時の分を差し引いて計算すると、100分歩いたときに余分に使うエネルギーは次のとおりです。| 体重 | 1万歩(約100分)で増える消費カロリー |
|---|---|
| 50kg | 約175kcal |
| 60kg | 約210kcal |
| 70kg | 約245kcal |
計算式:(メッツ−1)×体重(kg)×時間(h)×1.05。速歩きなら消費はもう少し増えます。
毎日1万歩で痩せる?痩せないのはなぜ?
体脂肪1kgを減らすには、およそ7,200kcalの消費が必要と言われます。体重60kgの人が毎日1万歩歩いて増える消費は約210kcalなので、食事がそのままなら1kg減らすのに1か月以上かかる計算です。 さらに、歩いたぶんお腹がすいて少し多めに食べると、差はすぐに埋まってしまいます。「毎日1万歩歩いているのに痩せない」という声が多いのはこのためです。歩くことは健康にとても大切ですが、体重を減らすなら食事の見直しや筋トレと組み合わせるのが現実的です。1万歩は歩きすぎ?
健康な人にとって、1日1万歩が「歩きすぎ」になることはまずありません。研究でも、1万歩以上で健康リスクが上がるという結果は出ていません。 ただし、急に歩数を増やすと、ひざや足の裏、すねを痛めることがあります。ひざや腰に持病がある人、体重が重い人、妊娠中の人は、歩数より体の声を優先してください。心臓や血圧の病気で治療中の人は、医療機関で目安を確認しましょう。結局、何歩を目指せばいい?
- 今の歩数を知る:スマホの歩数計で1週間の平均を見る
- まずは今より2,000歩増やす:2,000歩から4,000〜5,000歩に増やすだけでも、研究上はっきりした差があります
- 7,000〜8,000歩を目標にする:ここまで来れば、効果の大部分は得られます
- 余裕があれば1万歩:60歳未満の人や、血糖値が気になる人は、さらに上乗せする価値があります
歩数を増やすのに役立つ道具
歩数を増やすコツは、「歩くのが楽になる」「歩いた分が見える」ようにすることです。靴・スマートウォッチ・ウェアの3つをそろえると、毎日の歩数を伸ばしやすくなります。
歩きやすい靴
1日に何千歩も歩くなら、いちばん大事なのは靴です。足に合わない靴は、ひざや腰の痛み、靴ずれの原因になります。クッション性があり、つま先に指1本分ほどの余裕があるものを選びましょう。
歩数を記録するスマートウォッチ
スマホの歩数計は、スマホを持ち歩いていないときの歩数が数えられません。腕につけるスマートウォッチなら、家の中の移動まで記録できます。歩数が目に見えると、「あと1,000歩」と自然に歩くきっかけにもなります。座りっぱなしを知らせてくれる機能があるものも便利です。
歩数と睡眠を手軽に記録したいなら:バンド型
細くて軽く、寝るときもつけたままにしやすいタイプ。歩数・心拍・睡眠を毎日自動で記録します。
歩いた距離やコースも見たいなら:GPS付き
GPSで歩いた距離やルートを記録できるモデル。ウォーキングからランニングまで、運動の幅を広げたい人に。
動きやすいウェア
汗をかいても乾きやすいウェアや、ウォーキング用のソックス、リュック、水筒などは、スポーツ用品の通販でまとめてそろえると便利です。
価格・在庫は各ショップのページでご確認ください。
まとめ|1万歩にこだわらなくていい
「1日1万歩」は万歩計の名前に由来するとされる数字で、研究で決まったものではありません。研究では、死亡リスクの低下は7,000〜8,000歩前後で頭打ちになり、60歳以上ならさらに少なくても十分です。1万歩はおよそ6〜7km、100分前後、体重60kgで約200kcal。歩くだけで大きく痩せるのは難しいので、食事や筋トレと組み合わせましょう。 流行りの健康法を研究から検証するシリーズでは、「冷水シャワーの効果は本当?」もまとめています。参考にした資料
- Ding D, et al. Daily steps and health outcomes in adults: a systematic review and dose-response meta-analysis. Lancet Public Health. 2025(ScienceDailyの紹介記事)
- Paluch AE, et al. Daily steps and all-cause mortality: a meta-analysis of 15 international cohorts. Lancet Public Health. 2022(紹介記事)
- Lee IM, et al. Association of Step Volume and Intensity With All-Cause Mortality in Older Women. JAMA Intern Med. 2019
- 厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」
- 厚生労働省 健康日本21アクション支援システム「改訂版 身体活動のメッツ(METs)表」
