プロ野球の舞台であるメジャーリーグベースボール(MLB)に、日本から飛び出した異才がいます。その名前は大谷翔平。彼のパフォーマンスや成績は多くのファンやメディアを魅了し続けていますが、彼の背景には数々の興味深いエピソードが隠されています。
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高校時代の大活躍
大谷は岩手県出身で、花巻東高等学校のエースとして甲子園にも出場。高校時代から145km/hを超える速球を持ち、その実力で多くのプロチームから注目を浴びていました。しかし彼の特筆すべきはその投手だけでなく、打者としても驚異的な力を持っていたこと。甲子園では投手としての彼の姿をよく見ましたが、打者としても中心打線を担っていたのです。
日本プロ野球での二刀流挑戦 躍進の秘密
二刀流でプロ入り
2012年のNPBドラフト1位で北海道日本ハムファイターズから指名され、2013年に入団。
プロ入り後、北海道日本ハムファイターズで彼はその才能をさらに開花させました。一般的には投手としてのキャリアを選ぶことが多い中、大谷は「二刀流」という異色のスタイルでプロ野球界に革命を起こしました。投手としての勝ち星やストライクアウトはもちろん、打者としてもホームランや打率でチームを支えました。
二刀流への批判
といっても、プロ入り当初は、野球評論家の張本勲氏、佐々木主浩氏、野村克也氏など球界のOBたちの多くは、大谷の二刀流に反対していました。北海道日本ハムファイターズ栗山監督まで批判の対象になりました。
2013年6月、TBS系テレビ「サンデーモーニング」に出演した張本勲氏は、「このままでは中途半端で終わる。ピッチャーで5勝、バッターで2割8分くらい。どっちかに決めないと。150キロを投げられるピッチャーはそうそういない。(投手専念なら)相当な選手になる」
ゲスト出演した佐々木主浩氏は、「(初勝利に)あっぱれ!をあげたいが、4回くらいからボールが抜けていた。高校生のストレート。まだ投げる体力がないし、投手の練習が足りていない。高校の貯金で投げているだけで、プロとしては体力不足だと感じた。3年後、5年後が心配。ピッチャーだけ練習している選手と差がつくと思う」
2015年の雑誌の対談企画で佐々木氏は、「メジャーで二刀流は絶対ありえない。今20歳(当時)で、ここからの3、4年が体を作るのに大事な時期。でもピッチャーとバッターじゃ、使う筋肉が全然違うからね。いちばん伸びていく時期に両方やらせるのはどうかと思うね」と発言。
ノムさん、考えを改める
野村克也氏もまた、当初は大谷の二刀流には反対の立場をとっていました。「二刀流?ふざけんなって感じだよ。一刀流だけでも大変なのにプロ野球をなめるなって言いたい。俺が日ハムの監督して使うなら間違いなくピッチャー」と痛烈批判。野村は大谷の打撃をある程度認めながらも「結局、二兎を追うものは一兎をも得ずになる気がするな」とこれまでの常識にとらわれた発言をした。
ところが、予想に反してプロ入り4年目の2015年に最多勝と最優秀防御率のタイトルを獲り、2016年には打率がプロ入り初の3割台、22本塁打など投打に大活躍。これには超辛口批判をしていた野村も考えを改めないわけにはいきませんでした。
野村は、2016年12月放送されたフジテレビ系「フルタチさん」では大谷選手の実力を認め、「もう自信を無くした。自分の見る目とか言うことは信用していたから、(いつもは発言を)撤回することはほとんどない。今回だけは、撤回させていただきます。大谷さん、すいませんでした」と謝罪した。
曼荼羅チャート
2016年11月、野村はベンチで大谷と話す機会があり、大谷の野球に取り組む真摯な姿勢を見て、「なぜ大谷はこれほどまでにしっかりとした考えを持っているのか」と疑問に思いましたが、大谷が高校時代に「目標達成シート」なるものを作っていたことを知り、腑に落ちます。
これは「曼荼羅チャート」と呼ばれるもので、1ブロック9マスからなるグループが9グループあり、その9グループの中心に最終目標を書きます。大谷の最終目標は、ドラフト8球団で1位になることでした。その最終目標を達成するために必要な事柄を8項目、書き込んでいきます。つまり、最終目標を達成するために必要な事柄を細分化していたのです。細分化することは、目標達成のための技術としてよく用いられる方法で、高校時代の監督が選手にこれを作るように指導したらしいのですが、これを高校生だった大谷が一つ一つ実行し、現在の大谷になったのです。
左下には人間性とあり、更に、人間性を獲得するための小項目が8個、書き込まれており、その中に感性という項目があります。野村は、高校時代の大谷が最終目標を達成するための条件の一つとして人間性、感性を挙げていることに興味を持ったのです。そういえば、大リーグで目覚ましい活躍をする大谷ですが、奢らないその人間性が注目を集めていますね。曼荼羅チャートを見ると、人間性を獲得するために必要な行いとして、思いやり、感謝、礼儀などが書き込まれていますが、現在の大谷からこれを一つ一つ実行していたことがわかります。野村はいち早く大谷の人間性に気が付いていたと言えます。
野村は常々、「人間的成長なくして技術的成長なし」と話しており、成人したプロ野球選手でさえ理解できていないこの思想をまだ高校生だった大谷が理解していたことに驚愕します。
大谷は、技術面において、非常に修正能力が高いと言います。おそらく、この人間性を重んじる大谷はコーチなどの指導には素直に耳を傾けていたのでしょう。未完成だった打撃フォームも短期間で見違えるほど安定したものになったといいます。それを実感した野村は、ピッチングだけではなくバッティング技術も完成しつつある大谷を見て、二刀流として大成するかもと考えを改めざるを得なくなったのです。
ID野球の生みの親、との異名を持つかつての名監督の判断を鈍らせるほど、大谷の潜在的な能力は凄まじかったことになります。
MLB移籍後の活躍
2017年オフ、大谷はポスティングシステムでメジャーリーグベースボール(MLB)のロサンゼルス・エンゼルスに移籍しました。
大谷がMLBへの挑戦を決意したとき、日本のスーパースターがアメリカの舞台でどう振る舞うのか、世界中がそれを注目しました。
2018年シーズンから投打にわたり活躍し、3試合連続となる第3号本塁打を記録しました。日本人による3試合連続本塁打は、松井秀喜以来2人目の快挙です。そして、日本人史上4人目の新人王を受賞。
2021年シーズンでは、2001年のイチロー以来となる日本人史上2人目(アジア人史上でも2人目)のシーズンMVPとシルバースラッガー賞を受賞しました。
2022年8月9日、MLBではベーブ・ルース以来約104年ぶりとなる、二桁勝利・二桁本塁打を達成しました。
2023年8月9日、MLB史上初の2年連続の二桁勝利・二桁本塁打の偉業を達成しました。8月19日現在、大谷は43本のホームランを打ち、2位とは10本以上の差をつけ単独1位です。
大谷は、現在もその期待を裏切らない活躍を見せています。
プレイの中での彼の魅力はもちろんのこと、オフのエピソードも彼の魅力の一部です。常に謙虚で、チームメイトやファンに対して真摯な態度を持つ彼は、MLBでも多くの選手やファンから愛されています。一例として、試合後のインタビューではいつも感謝の気持ちを忘れず、困難な時期でもポジティブな姿勢を崩さない姿が印象的です。
寝る子は育つ
大谷翔平は、睡眠をとても大切にしています。彼は最低でも8時間、休日には12時間も寝ることがあると言われています。
「小学生のころは毎日夜9時から朝7時まで寝ていた。昼寝もしますし、半日くらい寝ていたかもしれない」と彼は言います。大人になってプロ入りしてからもよく寝るそうで、睡眠を優先するために食事の誘いを断ることもあるそうです。彼の睡眠の深さは、つねっても起きないほどだというエピソードもあります。
人は睡眠中に成長ホルモンが多く分泌されます。身長193センチ、体重95キロの恵まれた体格は、睡眠によって作られたと言ってもよさそうですね。
未来への展望
現在もMLBでの活躍を続ける大谷。その可能性はまだまだ未知数です。日本の若い世代に夢と希望を与え続ける彼の活躍からは目が離せません。彼のこれからの活躍には、今後も大いに期待したいと思います。
まとめ
幼い頃から野球に打ち込んでいた大谷は、プロ入り前から二刀流を宣言していました。
そんな彼に、かつて日本のプロ野球界で一時代を築いた重鎮たちは、口を揃えてその可能性を否定しました。大谷はそんな批判をものともせず、二刀流で突き進むことを決意し、プロ入り4年目にもなると投打ともに素晴らしい成績を残しました。アメリカに渡り、MLBで大活躍中の彼は誰も成し遂げていない2年連続二桁勝利・二桁本塁打の偉業を達成しました。今ではホームラン王に向けて着々とその記録を伸ばしています。
大谷の凄さは、自分に限界を作らず、道なき道を歩き続けたところにあります。大谷を見ていると、人間には不可能なことなどないことを改めて教えられますが、それは、大谷の弛まぬ努力の賜です。
私たちの人生にも、到底乗り越えられないと諦めてしまいたくなる壁が行く手を阻むことがあります。
しかし、それはあくまでも自分自尊が作った壁です。見方を変えたり、大谷が高校生の頃から行っていた、目標を細分化する方法などを用いて努力を継続すれば、必ずその壁は突破できることでしょう。困難や障害があっても、諦めず、着実に人生を歩んでいきたいものです。
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