「仕事や勉強をしなければならない」ことはわかっているけど、「息抜きしたい、遊びに行きたい」このような相反する気持ち、すなわち、葛藤を感じたことは誰しもあるのではないでしょうか。この気持ちは自然なことであり、多くの人々が生きていくうえで様々な葛藤を抱え、より良いと思える道を選択して人生を歩んでいます。
葛藤を解消する方法は人それぞれであり、その人の性格や思想、人生観といった要因に影響を受け、どちらか一方の道が選択されます。でも、どちらも魅力的なものである場合は、どちらかに決めることは難しく、「ああ、体が二つあったら両方選べるのに!」と思うことも珍しくありません。こんなとき、ひとつの体でも二つの望みをかなえる方法があります。それが「集中力」です。
この記事では、集中力を高めることで仕事や学びの効率を向上させ、両者のほどよいバランスを保ちながら、葛藤を少なくする方法を説明します。
葛藤とはなにか
「葛藤」の語源
葛藤という言葉は、中国文学の影響を受けています。この言葉は、文字通りには、「葛」と「藤」という2種類の植物が絡み合っている様子を描写しています。これらの植物は、一度絡み合うと解きほぐすのが非常に困難であることから、この言葉は比喩的に対立や混乱の状況を指すようになりました。
葛藤という言葉は、日本でも同様に対立や混乱の状況を指す言葉として広く受け入れられています。葛藤には、個人やグループの間の対立などの外部的なもの、個人の心の中でおこる内部的なものがあります。
この記事では、個人の心の中でおこる内部的な葛藤について説明します。
内部的な葛藤
内部的な葛藤は、同時に叶えることが困難な複数の欲求が同程度のレベルで存在するため悩み、行動の決定ができない状態のときに生じます。
葛藤の心理学的な分類
心理学における葛藤は、主に3種類に分類されることが多いです。これらの分類は心理学者クルト・レヴィンによって提唱されました。
接近-接近の葛藤 (Approach-Approach Conflict)
個人が2つの魅力的な選択肢の間で選ばなければならない状況を指します。
(例1)2種類のケーキがあり、どちらも食べたいが、1つしか選べない場合
(例2)仕事も頑張りたいし、趣味や家庭も充実させたい場合
回避-回避の葛藤 (Avoidance-Avoidance Conflict)
個人が2つの不快な、望ましくない選択肢の間で選ばなければならない状況を指します。
(例1)楽器の練習が面倒だが、発表会で失敗するのも嫌な場合
(例2)現在の仕事に不満を感じているが、仕事を辞めると経済的に困窮する場合
接近-回避の葛藤 (Approach-Avoidance Conflict)
個人が何かに対して魅力を感じる一方で、それに対する恐れや不安も感じる状況を指します。
(例1)旅行に行きたいが、行くと経済的に苦しくなる
(例2)憧れの職種に転職したいが、経験がないためうまくやれるか不安である
さらに、リチャード・S・ラザルスは、4つ目として、二重接近‐回避の葛藤を加えました。
二重接近-回避の葛(Double Approach-Avoidance Conflict)
個人が2つの選択肢の間で選択を迫られ、各選択肢にはそれぞれ魅力的な側面と不利な側面がある状況を指します。この種の葛藤は、選択肢ごとに利点と欠点が存在するため、決定をより困難にする可能性があります。
(例1)新しい仕事は給与が高いが、長時間の労働と厳しい勤務スケジュールが求められる一方、現在の仕事は 給与は低いが労働時間が短く、勤務スケジュールも緩い場合
(例2)家を購入するとき、一つの家は広々としていて美しいが価格が高い。もう一つの家は価格が手頃だが、狭くてあまり綺麗ではない場合
葛藤の根本的な要因
葛藤の多くは、時間と資産に限りがあることに起因するものが多いです。従って、いかに限られた時間の中で効率よく、生産性をあげるのかが重要になってきます。
葛藤を解消する集中力
大抵の人は、仕事を頑張りすぎるると残業が続いたり休日も返上することになり、趣味にかける時間や家庭を顧みる時間がなくなりますし、反対に、趣味や家庭にかける時間を多くすると仕事にかける時間が削られたりします。両方をバランスよく、といっても両方とも中途半端になってしまえば元も子もありません。
なぜこのようなことがおこるのかといえば、時間が限られているからです。一日は24時間であるという制約がなく、永遠に生きることができ、仕事にも趣味や家庭にかける時間も無限にあるのであれば、仕事をとるか、趣味あるいは家庭をとるかなどという葛藤は生じるはずがありません。
一般的な職場の勤務時間は1日8時間程度、睡眠を8時間とるとすると、残りの8時間で身支度や往復の通勤、食事、入浴などを行い、余った時間で趣味や家族との団らんなどを行わなければなりません。あたりまえのことですが、何をするにしても時間がかかり、あなたが趣味や家族との団らんにあてる自由時間は少なく、どうしても後回しになってしいます。
葛藤の中でも、仕事も頑張りたいし、家庭も充実させたいといった、接近-接近の葛藤の場合は特に、時間の制約があることが根本的な原因として考えられます。
つまり、時間の制約があるせいで、仕事をとるか趣味や家庭をとるかという葛藤が生じることが多いのです。それであれば、時間を制する者が葛藤をも制することになります。時間を制するとは巧みな時間管理術ばかりでなく、限られた時間の中で成果をだすことも含まれます。例えば、8時間かかっていた仕事や勉強を6時間で終わらせることができたらどうでしょうか。2時間の自由時間が生まれますから、その時間に自分のやりたいこと、趣味や家族とのふれあいができることになります。その貴重な2時間を生み出すのは、あなたの集中力しかありません。
あなたの集中力をチェックしてみよう!
以下に当てはまる人は作業に集中できていない可能性があります。
- 仕事や勉強をする場所が騒がしい
- 部屋の蛍光灯が切れている、ちかちかしている
- 部屋が暑すぎる、寒すぎる
- 机のまわりがちらかっている
- 作業中にPCやスマホのメールを確認してしまい作業が中断される
- ラジオやテレビをつけながら仕事や勉強をしている
- 食事の栄養バランスは考えていない、満腹感が得られればよいと思っている
- 定期的に運動をしていない
- 作業をする時間と休憩時間が曖昧
- 首や肩、腰に痛みがあり気になる
- 寝つきが悪い、夜中に何回も起きてしまう
- 仕事や勉強中に雑念が浮かびやすい
- 時間は有限であるという意識がない
- 何のために仕事をしたり勉強するのか目的が明確ではない
上に心当たりのある方は下の記事を参考にしてください。
まとめ
私たちの内部でおきる葛藤は、同時に叶えることが困難な複数の欲求が、同程度のレベルで存在するため悩み、行動の決定ができない状態のときに生じますが、その多くは時間が有限であることに起因します。
集中力を向上させることで、短期間で効率よく作業をすすめることができ、生産性を高めることができます。それにより、限られた時間の中で自由時間を確保することができ、今まであきらめていた選択肢も実行することが可能になります。
みなさんも、集中力を高めて葛藤を軽減し、人生を楽しみましょう!